わたしたち人間のからだは、約37兆個の細胞からできています。細胞が生きるためにはまず、足場に依拠すること=ゆだねることが必要です。
足場がなく、ゆだねることができない細胞は、成長、増殖ができません。
ゆだねることができれば、そこから拡がる動きがでてきて、成長・増殖していくことができます。このような性質をもつ細胞の集合体である私たちのからだも、同様です。
その場にからだをゆだねる
↓
沈み込む
↓
拡がる
拡がってからだに自由とスペースがもたらされると、からだにもともと備わっている自己調整知能の力(自己治癒力、自己組織化)が発揮され、怪我や事故、病気、その他さまざまな理由により硬くなったり委縮したりしていた部分も動き出し、受け手のからだ全体がより楽なバランスへ向かっていきます。
ここで重要なのは、ゆだねるという動きが能動的であるということです。
思考ではなく、生き物としてのからだがその場を安全・安心であると認識することで、初めてからだはその場に落ち着きゆだねる動き=イールドを開始するのです。
からだが安全・安心を認識していないと、ベッドに横になって休んでいるように見えても、どこかしら身構えて、重さの分だけベッドにゆだねることができず、いくら休んでも疲れから回復した気がしないということが起こったりします。そこで、からだが安全・安心を感じられるように、イールドの技法では「間合い」を重視します。「間合い」は、施術者と受け手の間の空間的位置関係のことです。
施術者と受け手のどちらもが居心地よく感じられる間合いを見つけ、その居心地のよさを終始保つようにします。からだが充分に安全・安心を認識すると、受け手のからだの自己調整知能が働きだし、からだにとって必要なことが起こっていきます。
受け手に必要な変化が起こるのを邪魔しないよう、用いられるタッチは必要最小限のもので、手を離したあとはまた間合いをとって見守ります。実際に手を触れなくても変化が起こっていくこともまれではありません。
施術者側からの押し付けではなく、受け手のからだが自発的に起こす変化は無理がなく、また持続しやすいものです。
イールドの技法の正式名称は、Yielding Embodiment® Orchestration です。
セッションの回数を重ねていくことで、今まではバラバラで連携がとれていなかったからだが、次第に有機的なつながりをもっていく過程は、様々な楽器がそれぞれの持ち場でそれぞれの個性を発揮しながらも、全体として調和のとれた演奏をすることにも例えることができます。
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